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ねこやまローカボ日誌

美味しいご飯を気にせず食べたい、食べさせたい。だから厳選ローカボレシピを紹介させて。

~快適雑記~ 子供に勉強を教える時、同じことを繰り返させる方法っていいよね(その③)



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同じことを反復し、その動作の意味を知る。

 

子供の頃に理解するべき、それぞれの動作の意味合い。

その意味を体感できれば、継続する意味も生まれてくる。

 

このお話は、前回からの続きである。

お時間のある際にでも、お読みいただければ幸いだ。

 

 

 

 

 

生徒との対面と初めての授業

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これからの授業内容に悩みながら、初めての授業を迎えた。

4月の新年度の開始と同時に、初回の算数の授業が行われた。

 

当日はご両親との面談もあり、凄まじい緊張感だった。

ビデオカメラ忘れちゃった。」と仰るお母様は、結構な緊迫感を与えてくれた。

 

何を聴き、何で緊張をほぐし、何で信頼を勝ち取るか。

わずか90分の授業だが、準備には3時間を要した。

 

 

わんぱくボーイ様の授業をするのだから、下準備はいくらも足りないくらいだ。

講師としての信頼感の前に、人としての信頼感を勝ち取らなければならない。

 

もちろん勉強だけではなく、小学生の時事ネタにも精通する必要がある。

前日には他の生徒からムシキングの知識を仕入れ、全ては万全だった。

 

 

そして授業当日。

忘れもしない、土曜日の16時からの回だった。

 

失敗できない初回授業。

親御様の目の前で、講師としての全てを見せなければならない。

 

どの様な授業スタイルなのか。

受験生に対して、どんな意識で教えるのか。

 

発言の正確性、誠実性、板書の綺麗さ。

あらゆる要素が、スネ夫ママによってチェックされる。

 

その緊張感たるや、まさに地獄

これからの講師ライフを決定する、もっとも重要な授業なのだ。

 

 

時間は15時30分

授業まであと30分と迫ったところで、タバコを済ませた。

 

浴びるようにリセッシュをスーツに振りかけ、歯を磨く。

丸の内OLの2倍の致死量のブレスケアを口に含み、準備は万端だ。

 

鏡に向かってニコッと笑い、第一印象も忘れない。

絶対に滑りようのない話も用意し、これ以上ないコンディションだった。

 

 

必要な教材を小脇に抱え、ペンも全て新品に交換。

個別ブースに移り、生徒を待ち受ける。

 

ゴキブリが入り込んできても、思わず挨拶してしまう意気込みだ。

わんぱくボーイがいつ来ても、余裕で返り討ちにしてやろう。

 

そして時間は、約束の16時

授業開始の時間である。

 

 

……。

 

……。

 

周囲では他の授業が開始され、フロア全体が賑やかな声に包まれる。

 

 

……。

 

……。

 

隣のブースからは、宿題を忘れたと言う生徒の声。

そしてそれに激昂する、女性講師の怒号が鳴り響く。

 

生徒の父親と母親が、段々とそわそわし始める。

「あの子、学校からくるのよね?」そんな事を確認し始めていた。

 

 

来ねえ。

 

初回から、やってくれたな。

まだ見ぬ教え子に、私は宿題の倍増を決心した。

 

しかし、全く来ない。

10分たとうが20分たとうが、全く来ない。

 

 

安定のわんぱくボーイ様。

よくある遅刻癖と言われる性格だが、まさか初回から披露してくれるとは。

 

初回授業で私は自分のことばかり考えていた。

しかし本当の敵は、生徒が来ないことだったとは。

 

30分、40分、50分…。

時間はさらに、刻々と経過する。

 

ついに授業終了まで20分。

もはや私と同様、父親と母親も諦めかけていた時だった。

 

 

こんにちは…。

 

 

ジャイアンツの帽子に、ジュラシックパークのTシャツ。

とてつもない最先端の服装に包まれた少年が、私の目の前に現れた。

 

怒り狂う父親と、その少年をかばう母親。

どうやら彼こそが、私と運命を共にする少年の様だった。

 

 

彼の名は、コウスケ

個人情報に該当する恐れがあるため、漢字での表記は避けさせていただいた。

 

残り20分で授業に現れた、受験生コウスケ。

いや正確には、父親の説教時間を差し引いて残り10分だ。

 

 

もしかしたら、道端で困っていた老婦人の米俵搬送を手伝っていたかもしれない。

私は仏のような笑顔で、遅刻の理由を聞いた。

 

どうして遅刻したの?

学校で居残りでもあったの?

 

 

するとコウスケは、私の質問にこともなげに答えてくれた。

 

「宿題してました。」

 

でたっ!!

絶対あり得ない系の嘘だ!!

 

今日は土曜日だぞ!?

土曜日の16時だぞ!?

 

国民のお休み日曜日に提出する最重要課題が、学校で出されたというのか!?

そしてそれは、帰宅直後から開始しなければ間に合わないボリュームなのか!?

 

しかも今日は、君にとっても重要な日だろう!?

塾が嫌な感覚は理解できるが、なんかそういう雰囲気ってあるじゃん!!

 

私は上記の内容を、熱量を下げ、非常に丁寧な言葉でコウスケに尋ねた。

怒らないからいってごらん?という、前提もしっかり添えて。

 

 

しかしここで、まさかの事態が発生した。

私の目を疑う、思わぬ光景が広がったのだ。

 

 

その言い訳に、父親が最大の理解を示し始めたのだ。

『ああ!そうだったのか!!』と。

 

疑ってゴメンネ、コウスケ。

学校の宿題をやってたのなら、仕方がないよね。

 

赤べこのように頷く、過保護な父親。

「お腹減ってない?」と、なぜか胃袋具合を心配する母親。

 

段々と仕方がないよねムードが漂い、コウスケは笑顔を取り戻しはじめた。

しかしその笑顔には、一抹の黒い笑顔が含まれていたように感じた。

 

 

これはまじか。

マジな感じなのか。

 

この受験生は、考え方を方向転換しなければならない。

それはこれから共に学習をする上で、知識以上に必須な部分だ。

 

嘘をつかないこと。

嘘をつく自分を変えようとすること。

両親が優しさと必要性をはき違えないこと。

 

挙げればきりがない、初回授業で露呈された弱点。

私はこれから、彼らと共に立ち向かわなければならない。

 

 

子供に何かを教える。

 

それは知識だけではなく、何かを教えられる下地作りから始まっている。

信頼や安心といった言葉でくくりきれない、一定の基準点。

 

その意味合いを一撃で伝えきれる言葉は、恐らくないだろう。

これからの2年間を使い、私にはそれを伝える必要がある。

 

 

まだ一文字も教えていない、彼との授業。

 

これからの受験ライフ、どうやら厳しくなりそうだ。

心の底からそう感じた、ヘヴィな一日だった。

 

その④に続く